第3回 「障害福祉サービス等処遇改善計画書」の作成に当たって。数字の山にどう取り組むか。

皆さんの事業所でも新年度の処遇改善計画書の様式を入手し、4月15日の期限までに送付するため、計画書作成に取り組んでおられることと思います。

いつもながら、簡単に作成できそうに見えるのですが、見えるだけで、実際には一つ数値を入力するにも、面倒な集計が必要です。いかにして求められる数字を効率的に算出するかが作成の鍵になります。

まず、「障害福祉サービス費等支払決定額内訳書」に基づきサービス別に昨年1月から12月までの報酬総額を算出する必要があります。数字を一つ一つ拾って手でエクセルに入力すると間違うと思い、私は、内訳書をPDFファイルにし、テキストを読み取れるようにしました。コピペでエクセルに貼り付け、数字の半角スペースを置換え機能で一括削除したりして、報酬総額を算出しました。

次の準備は、昨年1年間に支給された処遇改善加算と特定処遇改善加算を「福祉・介護職員処遇改善加算等総額のお知らせ」で把握することです。

そして一番面倒なのは、処遇改善加算と特定処遇改善加算を原資とする賃金改善額と通勤費を除く給与総額の算出です。常勤職員と非常勤職員の別に把握する必要があります。加えて、それらの金額を、特定処遇改善加算を用いておこなう平均賃金改善額の算出のために、Aグループ人材とBグループ人材の別に算出しておかなければなりません。併せて、処遇改善加算と特定処遇改善加算の支給額を、それらを原資として支給する手当の比率に応じて、AとB両グループに分けておく必要があります。

さらに最後の面倒な作業は、常勤換算のために、非常勤職員の勤務時間数を集計することです。勤務時間総数と数の少ないAグループ職員の勤務時間をまず算出して、その差としてBグループの勤務時間数を把握し、常勤換算をすればよいでしょう。非常勤職員の数が多いので、私はエクセルの大きな表で毎月の勤務時間数を管理して、SUMIF関数を使って合計額が一発で出るようにしています。

また、特定処遇改善加算を用いた平均賃金改善額の計画のために、Aグループを1としたときのBグループの配分比率を、私は、前年度の特定処遇改善加算の分配の実績で算出しました。

数字をこのように準備して、次に計画書の作成に取りかかります。

ここでポイントは、処遇改善加算の支給により「素の賃金」がいくら改善するのか、特定処遇改善加算の支給により「素の賃金」がいくら改善するのかを分けて考えるということです。これを理解していないと、作業が進みません。

「素の賃金」とは、特定を含む処遇改善加算を原資とする手当(実際には加算の実績と考えてよい)を除いたものです。計画書では、加算の見込額を賃金改善の見込額が1円でも上回ればよいようです。(特定を含む処遇改善手当の支給により、事業所の法定福利費の負担も増えます。その金額を計算してその分も賃金は増加しているとしても良いのですが、計算はあまりにも複雑で私は諦めました。1円しか上回っていなくても、実際には事業所は相当な負担増をしているということになります。)

さて、計画書では、前年度の報酬総額が今年4月から1年間の加算見込額の算定ベースになっています。前年度は非常に好調であったが、新年度のサービス提供は大幅に減る可能性があれば、賃金改善の見込額は、処遇改善加算の見込額を下回ることになり、要件を満たさないことになってしまいます。常に成長するとの前提で計画書は作成しなければならないようです。結局、この計画書は、処遇改善加算及び特定処遇改善加算以上の賃金増を国に対して誓約することが目的なのではないでしょうか。