第1回 通知文「令和3年度報酬改定に伴う運営等に関する基準の見直しについて」を読んで

ケアコネを利用しておられる事業所の皆さん、こんにちは。

訪問系の障がい福祉サービス事業所で管理者の手伝いをしているHです。実際のヘルパー経験はありません。人生の大半を福祉以外の仕事をして過ごしてきました。

 

ここでは、行政からの様々な指導や指示にいかに手際よく従って業務を進めるかについて、自分の考えを記してみたいと思います。

 

事業所は、福祉サービスの対価として介護給付費を国に対して請求します。一般社会では、代金回収までが仕事だとよく言われますが、福祉の世界では、この請求が不良債権になることはなく、その意味で福祉は恵まれていると言えます。

 

その代わりに事業所は、行政(実際には所管の市の福祉当局)から様々な指示、指導を受けます。指示、指導がどのようなものであれ、それに従って業務を遂行し、記録を残し、適切に報告をしないと、いつか大変な目に遭うことになります。そうです。皆さんもご存じの「実地指導」です。「実地指導」で何らかの指摘を受けて、言葉による指導だけで済めばいいですが、これまでに支給した介護給付費を返金せよとの命令を受けると、事業所の一大事となります。

 

ただでさえ利用者とヘルパーの間に入って日々多忙な管理者やサ責にとって、行政からの様々な指示、指導を一つ一つ理解し、丁寧に対応することはとても難しいものです。福祉の世界では想像以上に事業所間の情報共有がありません。どの程度、指示、指導を守るべきなのかという「世間相場」がなかなか把握しづらいのです。もちろん徹底的に細部にわたり指示、指導を守ることが一番なのですが、業務に追われる毎日ではなかなかそうもいきません。やはりある程度、手際よく対応しないと、利用者へのサービスがおろそかになって本末転倒となります。私なりに理解しているこの手際とも言うべきものをこのサイトで述べていきたいと思います。

 

それでは第1回目として、令和3年9月3日付けの大阪市福祉局障がい者施策部から通知文「令和3年度報酬改定に伴う運営等に関する基準の見直しについて」を取り上げてみたいと思います。

 

腰を据えて読まないと理解しづらいのですが、事業所の運営基準にかかる改正内容がこの通知文に盛り込まれています。皆さんも既にこの通知文を受け取られて、その後色々とアクションを起こしておられることと思います。まずは、感染症や災害発生時等においても必要なサービスを継続的に提供できるよう「業務継続計画(BCP)」の作成が義務化されました。

 

既に感染症対策の一環としてBCPの作成が指示されていましたが、今回は、災害発生時のBCPも作成が指示されました。それぞれ雛形も明示されていますので作成は容易ですが、施設系とは異なり、とりわけ訪問系の事業所は具体的な緊急事態発生時のイメージがつかみにくく、計画の中身を合理的に埋めていくのは難しいです。通知文によれば3年間の経過措置があるので、今すぐに作成しなくてもペナルティーはありませんが、経過措置が終わっても、BCPの作成や感染症対策の委員会の設置、同対策の指針の策定がなされていなければ何らかの不利益を被ることは言うまでもありません。

 

BCPを始めとする文書作成そのものは、やる気になれば1日で作成できます。加えて、感染症対策用備蓄品や災害対策用品の購入にさらにもう1日が必要となるでしょう。しかし最も大変なことは、継続的な実施が義務付けられた研修や訓練です。何をどう研修し、訓練するのか、頭を悩ませることになります。BCPの内容を共有したり、コロナ感染者発生時の防護服の着脱の仕方などの訓練がその内容になるでしょうが、毎年内容を変えて実施することは、なかなか大変です。

 

おそらく同じ内容を毎年繰り返して実施をしてもよいのだと理解しています。要はいかにきちんと研修や訓練の内容を記録して残しておくかではないでしょうか。とにかく日時を決めて、職員を集め、関係の文書をコピーして配布し、要点を読み上げて質疑応答の時間を取るだけでも立派な研修になるように思います。コロナの感染が完全に終息するまでは、職員を分けて集め、同じ内容の研修を繰り返してもよいと思います。

 

BCPとは別に、今回、障害者虐待防止の更なる推進を掲げて、研修の実施、防止のための責任者の設置が努力義務とされ、令和4年度からは、これに加えて、虐待防止対策検討委員会の設置が義務となりました。さらに、身体拘束等の適正化の推進のために、身体拘束等の禁止が義務付けられました。セクハラやパワハラ防止の措置を講じることも同様です。

 

事業所の規模が異なっても、準備が必要な文書の種類にも、実施が必要な研修・訓練の内容にも、変わりはありません。とりわけ規模の小さい事業所は、今後、関係文書の作成、改訂、研修・訓練の計画的実施に時間と労力が取られることを覚悟しなければなりません。

 

さて、この通知文では、令和3年7月から、文書の作成、交付を電磁的方法で行なってもよいとの案内がありました。例えば利用者に交付する介護計画書を書面ではなくデジタルな方法で配布してもよいと理解できます。しかしながら、実際には、誰がいつこの文書を作成したのかを証明する「電子署名」が必要となり、まだまだ、小規模事業所には、実施のハードルは高く、当面はやはり書面による交付を続けざるを得ないようです。
(終)